
いろいろな物件を検討した結果でせっかく気に入って決めたお部屋なのに、結構多いのが、「騒音」問題で嫌な思いをされるケースです。当社が管理させていただいている物件でも、様々な「騒音」問題が発生します。賃貸マンション・アパートはなんといっても他人同士が共同生活するわけですので、生活スタイルの多様化や、生活時間帯の食い違いなどで騒音トラブルが増えてきていると感じています。
ピアノの音に対する賃貸契約書の解釈の相違が問題に
そこで、今回は当社の管理物件で発生した騒音トラブルのケースをお話しします。
ある日、当社が管理しているYマンションの入居者の方から、お隣の部屋のピアノがうるさいとの苦情が入りました。お話をお聞きすると、ピアノの音を出している方は以前からお住まいの方です。この方は、入居契約時の賃貸仲介業者の重要事項説明で、どうもピアノ不可との説明を受けずに入居されたようです。
賃貸契約書には、禁止事項の条項に「大音量でテレビ、ステレオ等の操作、ピアノ等の演奏を行うこと」と明記されているのですが、この方はこの文面を大音量で弾かなければ演奏してよいと理解されていました。ですので「電子ピアノの音量は調整できるので真ん中より上の音は出していない」と主張されるのです。 こういうケースの場合、クレーム元と騒音元はそれぞれの立場と主観で私たちに主張されるので、偏った判断をしてしまうと取り返しがつかないことになります。ですので、私たちが心がけていることは原理原則を曲げないこと、今回の場合で言えば賃貸契約書に明記されている禁止事項にピアノ演奏が入っていること、そして他人に迷惑をかけることは認めていないこと、苦情がきてしまっている以上結果として迷惑行為になってしまっていること、を粘り強くお話しして、基本ヘッドホーンを付けていただくこと又は音量を下げていただくことでご納得いただきました。
上下階の騒音問題は「お互い様の気持ち」がとても大切
次のケースは以前にHアパートで起きた上下階の部屋の騒音トラブルです。
2階に新しく引っ越してきた小さなお子様がいるご家族で、「入居後1カ月は我慢していたが、午前2時~4時頃うるさくなる。深夜の騒音は小さな子供もいる為大変迷惑している。対応してほしい」とのご連絡が入りました。当社としては上階の3階の部屋の方には直接言わずに、アパート全戸に騒音に関する注意文を配布しました。すると、上階の3階のお部屋の方から当社に連絡が入り「騒音の注意文を見てひょっとして自分のことなのか心配になった。深夜は寝ているし、普通に生活しているだけなので、もし自分のことだとしたらどうしていいかわからない」と連絡が入りました。ごく普通の方で非常識なことをするタイプには思えなかったのですが、気を付けて生活するようにお伝えしてしばらく様子を見ていました。
すると2カ月ぐらいしてから、再度クレームが入り「注意文投函後1週間ぐらいは良かったが、又夜中に騒音が続きフィットネスでもしているのではないか。夜中の騒音で子供が目を覚まし迷惑しているので、上階の人を追い出すかそれが無理なら自分たちが退去したい。初期費用をすべて返してくれるなら転居したい」という申し入れをしてきました。
その申し入れに対し再度上階の部屋の方にお話ししたのですが、前回同様「夜は寝ているし、友人宅に泊まったりして毎日自宅に帰っているわけでもないのでそんなに音が出ていないと思う。」と平行線の話。恐らく生活音に対する感じ方の問題かもしれません。こういった場合は本来あまりやりたくはないのですが、客観的な事実を把握したうえでの調整をするために、両者がそろっていてうるさいと思われるときに2階のお部屋に音を聞きに行くことを提案しました。

この提案の対しては、2階のクレーム元の入居者はあまり協力的ではなく、調整ができないまま、次第に要求する方向が「上階の入居者とどうしても話が食い違うので、手っ取り早い解決方法は管理会社(当社)が引っ越し費用を負担すれば解決しますよね」という内容を強く求めてくるようになりました。
ここで基本的なことの整理なのですが、
①管理会社は調整役でしかなく、騒音の問題の当事者はあくまでクレーム方と騒音元二者の問題であること。損害賠償を求めるのであれば、対象は管理会社ではなく騒音元を対象に法的手続きをするしか手立てがない。
②現地立会はするので、騒音が許容範囲かそうでないのか確認をさせて頂いて、過剰反応の場合は2階のクレーム元の入居者にご理解いただき、本当に騒音問題であるなら上階の入居者に是正を求めるという基本的見解をクレーム元の入居者に言い続けました。クレーム元の入居者も当社の基本的姿勢が変わらないことで、あきらめられたのかしばらくしてご自身で退去されていきました。結局客観的事実確認ができないままだったので、当社も残念だったのですが、このケースでも一方に偏った判断でことを進めることはできませんので、やむお得ない結果だったと思っています。
以上最近のクレーム事例を2件ご紹介しましたが、中には実力行使で壁をどんどん叩いたり、お隣りのインターホンに苦情を言いに行く方までいらっしゃいます。感情的になり実力行使することは一番危険な行為ですので、その場はぐっとこらえて、私たち管理会社の人間にご相談ください。私たち管理会社は、常日頃様々な騒音の相談を受けていますので、経験値から解決方法を考えて調整させていただきます。
共同住宅というのは「一つ屋根の下」に暮らしているのですから、もしかすると将来こちらが相手に別の件で迷惑をかけることもあるかもしれません。共同住宅で快適に暮らすために一番大切なことは、「お互い様の気持ち」「寛容の気持ち」なのだと常々思っています。